君に染まる(前編)


上手く伝えられず焦っていると、
先輩がゆっくり振り向いた。



「…堀河?」



無表情でそう聞いてくる。



「あ…はい。
あの…さっき先輩が殴った…」



「ああ、堀河っつーのか………で?」



「で?」



で?…って、何?



「お前の聞いて欲しい話ってそんだけ?」



そんだけって…。



「まあ…そう、ですけど…」



「あっそ。ならもう用はねぇだろ。
さっさと帰れよ」



「え…」



あまりにもあっけなく終わったことに
戸惑っていると、
先輩が顔をしかめた。



「なんだよ。まだなんか…」



「そうじゃなくて…あの…
もう、怒ってないんですか?」



「何がだよ」



「だから…キス…のこと」



「は?なんで」


< 311 / 337 >

この作品をシェア

pagetop