君に染まる(前編)
上手く伝えられず焦っていると、
先輩がゆっくり振り向いた。
「…堀河?」
無表情でそう聞いてくる。
「あ…はい。
あの…さっき先輩が殴った…」
「ああ、堀河っつーのか………で?」
「で?」
で?…って、何?
「お前の聞いて欲しい話ってそんだけ?」
そんだけって…。
「まあ…そう、ですけど…」
「あっそ。ならもう用はねぇだろ。
さっさと帰れよ」
「え…」
あまりにもあっけなく終わったことに
戸惑っていると、
先輩が顔をしかめた。
「なんだよ。まだなんか…」
「そうじゃなくて…あの…
もう、怒ってないんですか?」
「何がだよ」
「だから…キス…のこと」
「は?なんで」