手のひらの終焉
それでも我に返って、ノインのいる方向に向かって、針を撃った。

「麻痺薬か。かわいい武器だな」

視界を塞がれた中で、弾が飛んできた。

濃い霧の中を裂くように、弾の姿が見えたのは、

わずか数十センチのところだった。

左腕が狙われている。

それが分かってもなすすべもなかった。

こんな至近距離まで迫った弾を体が避けきれない。

見えていながら、弾が当たるのを黙って待っていた。
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