タレントアビリティ

第二章 勘と感情制御に関する論争

 第二章





「能恵さん」
「うーん?」
「まだ買うんですか?」
「うーん」

 風音の一件からしばらく経った日曜日、添は能恵に連れられて本屋に来ていた。能恵の荷物持ちが添の任務。量がおかしい。

「あ、これとこれとこれと……。そえー、これ持ってて」
「乗せて下さいよ」
「はいはい。そーねぇ、心理学と犯罪と……。警察の裏事情と……。ついかーっ」
「……いえす」

 大型ショッピングモールの中にある紀伊国屋。添は能恵の大量購入に付き合わされているわけで。ショッピングカート4つを両手で操る才能が、だから添にはあるのだが。

「よーしっ! さ、お会計お会計」
「お金あるんですか、こんなに買う」
「カードで一括!」

 能恵が4つのカートのうち2つを添から引き取ってレジへと向かう。いったい何冊買ったのだろうかと、そんな疑問は全てレジでのやり取りが消し去ってくれた。

「お会計168点で、234360円になります」
「一括」
「畏まりました」
「カバーお願いできます?」
「無理です」

 3冊以上でカバー依頼はダメだよなと、周りからの痛々しい視線を感じながら添は思う。そして荷物持ちは添。車を使わない能恵だから、帰りが恐ろしかった。
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