タレントアビリティ
「はー、買った買った……」
「そんなに買って読むんですか?」
「当たり前でしょー? 活字は読まれて初めて意味を成すの。だーから、私は本は絶対に買う」
「置き場所が無いでしょうに」
「売るからいいの」

 まだ帰らない2人。フードコートでちんたら会話に花を咲かせる隣では、大量の本達が彼らの役割を果たす時を待っていた。
 そんな本達を差し置いて、添と能恵は飲み物とクレープ片手にのんびりトーク。辺りから見ればカップルか兄妹。そう言ったら怒られるだろうけど。

「よくそんなお金がありますよね、能恵さんって」
「そうよね、不思議よね。私の預金口座、使っても使っても減らずに増えていくみたいなのよ」
「サラリーマンを敵に回す発言は止めなさい」
「報酬が分割払いで振り込まれてるのよ。もう、そえ、あなたの食費も何もかもは、私から捻出されてるって知ってる?」
「……そういえば」

 能恵にとっては莫大な予算の一部だろうけどなと、添はコーヒーを飲みながら思う。
 頭を使う前には甘いもの。能恵はそんな事を言ってクレープをかじっている。ただ「ツナマヨクレープ」が甘いものに分類されるのかどうかは疑問だが。

「んー、おいしーっ!」
「クレープって普通、チョコバナナとかイチゴクリームとかじゃないですか?」
「むー。たまにはこんなのも食べたいのよ」

 クリーム、ではなくマヨネーズを頬に付けながらクレープをかじる能恵。そんな能恵のよく分からない主義を眺めていると、突然声が上がった。
< 82 / 235 >

この作品をシェア

pagetop