Ｒａｉｎ

しゃあない。
やるしかないか…


あたしは開き直りが早い。

スパッと頭切り替えて着替えた。


鏡に映る自分。
着慣れてないドレス。


よし…やるで。


ここまできてんから──


更衣室を出ると、そこには圭吾くんが立っていた。


『おっ似合ってるやん。別人みたいやなぁ。あ、時給な聞いたら4000円やって。あとはバックとかあるみたいやから頑張ったら時給も上がると思うわ。頑張ってな』






2001年11月。


あたしは夜の世界に足を踏み入れた。



時給も当時ならまだ良かった方だった。

未経験のあたしにとっては破格にも思えた。



こんな軽い感じで始まった夜のバイト。



週二回の少ないシフトだったけど、あたしにとっては“天国”みたいに感じられた。




みんなが楽しそうに笑う姿、騒がしい店内、時折見える幸せそうな顔。




こんな場所があったんや…そう思った。








圭吾くんに感謝かな…


思えばただのスカウトマンだけど、その出会いであたしは仕事をするにつれて少しずつ前みたいに笑えるようになれたから。