my name
10分くらいしてやっと戻ってきた。
「何だって?」
「あー、うん。何でもねぇ…」
伏し目がちに言う顔は決して何でもなくない。
でもだからってこれ以上は聞けない。
あたし達の間に沈黙が広がった。
「もう寝ようかな!」
先に沈黙に耐えきれなくなったのはあたし。
そう言って立ち上がった。
なのに亮佑は無反応。
「…亮佑?」
「あ!ごめん。何?」
何?って…。
声も聞こえないくらい考え込んでたの?
でもあたしには教えてくれないんだね。
「ううん。おやすみ」
「おやすみ」
本当はまだ一緒にいたいんだよ?
行くなって言って欲しいんだよ?
ドアの前で開けるのを少し躊躇った。
やっぱりもう少し居ようかな…。
そう思った時後ろから抱き締められた。
いきなり過ぎてびっくりした。
「空…」
「ん?」
ギュッとされて少し痛いくらいだった。
耳元で名前を呼ぶ声はあたしの心臓もギュッと締め付けた。
「何でもない」
今はその胸の中で思ってること伝えてくれなくても、いつか言ってくれるよね。
その時まで待つから。
「うん。おやすみ」