my name



「今日は俺が漕いでってやるよ」


学校へ行こうと自転車のカギをはずしていると後ろから亮佑が言った。

「本当?」

「任せろ」

嬉しいけどなんか変。

そう思ってしまうのは昨日のことがあったから?

ただの優しさでそう言ってくれてるの?



自転車に乗ると亮佑と初めて登校した日を思い出した。


広い背中にドキドキした。

それは今も変わらない。

でもあの時よりも愛しい背中。

無意識にぎゅっと掴んだ。



「空…。俺アメリカ行く…。」

「え?」

「父さんの赴任期間が延びたんだ」


「どのくらい…?」


「あと2年」



あと2年…。

昨日の電話が来た時、もしかしたらとは思ってたけど。

2年かぁ…。


2年ってことは高校卒業するまでってことだよね。


それまでずっとアメリカにいるってことだよね。



亮佑の家の事情もあるし。

あたしに止める権利はない。



「あと1週間で春休みだし、来週の土曜日には向こう行くから。」




そのまま何も言えず静かに学校に向かった。



ただ……

心臓は張り裂けそうに痛かった。










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