kasiraな私

幼い記憶

「どうして、藍にはお母さんが居ないの?」


「藍のお母さんはお星様になったんだよ。空に輝くお星様。見てごらん?1番輝いてるあの星は藍のお母さんだよ。お空の上からいつでも藍を見てる」


お母さんが居ないあたしは幼稚園でいつも虐められてた。


泣きながらお父さんに聞いたらお父さんは大きい手をあたしの頭に乗せて夜空を指差した。


滲む視界を堪えて見上げると1つだけ、まるで本当にお母さんの様にキラキラ輝いてて、幼いあたしはその星が本当にお母さんだと思った。


「お母さんは藍の傍に居るんだね!」


さっきまで泣いてたのを忘れてお父さんに笑顔を向けると優しく微笑むお父さんの顔。


「藍は1人じゃなんだよ。お母さんもお空で見てるし、お父さんだってずっと傍に居るよ」


お父さんはあたしの小さな体を壊れない様に優しくそしてぎゅっと抱き締めてくれた。


お父さんの大きい手。大きい体。お父さんの匂い。


お母さんとの記憶は無いけどその分お父さんとの記憶で一杯のあたし。


あたしのお父さんは怖い組長。


そんな組長なお父さんは1度死にかけた事があった。


あたしが小学校低学年の頃、他の組の人にピストルで打ち抜かれた。


絶対に死んだ。お父さんは死んだって思った。


でも悪運の強いお父さん。


弾丸は急所を外れ奇跡的に助かった。


「藍を置いてお父さんは死なないよ」


あたしの手をぎゅって握って言ったお父さん。


今回だってそう言ってくれるよね?


お父さん!




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