Virus
瞳「な…なんで、抗体あるんですか?」


祐「伊坂にはさっき話したんだが……。私はS.Dに入る前に違う組織に居たんだ」


瞳「違う組織?」


祐「あぁ。その時……その組織で抗体のサンプルが作られていたみたいでそのサンプルの実験台にされたんだ」


瞳「えっ!?」


ウチは驚いて今までの消毒していた手を止めた。


祐「サンプルだったから、感染はしないがその副作用が激しいみたいで……。その訳の分からん注射をされてから何分後かに、また違う注射したら呼吸が酷くし辛いわ、頭が割れるような頭痛に襲われるわ、熱が出てきて血管が浮き出てくるわで……。本当気が狂いそうだったよ」


祐騎さんは、傷口をギュッと握った。


瞳「なんで抗体があるって分かったんですか…?その時は分からなかったんですよね?」


祐「あぁ……。まぁ、検査したってこんな馬鹿げたものが普通の検査で現れるわけもなかったし普段はなんともなかったからな。だから初めは私も流架も分からなかった……。だが、お前等に会う前にここに来て1度だけあの化物に腕を噛まれてしまった事があったんだ。ウィルスの報告を受けた直後だったから正直もう終わりだと思ってた。それなのに、一向にゾンビ化しなかった。その代わり……さっきの症状に襲われてその事に気付いた。まっ……1時間程、気を失ったけどな」


「その時の傷だ」と右腕の傷を見せてくれた。


そこには、大きなあの化物に噛まれた歯形がクッキリと残っていた。


もう出血もなく半分かさぶたになっていた。


祐「まぁ、皮肉にも…そのお陰で私も流架も今ここにいられたんだけどな……」

祐騎さんはそう皮肉に笑った。


今にも壊れそうな笑顔。


ウチはそれを見て……


祐「さ…佐野?」


泣いてしまった。
< 239 / 426 >

この作品をシェア

pagetop