冬のロマンス
 校門に背を預けていた青年は、聞覚えのある声にはっとした。
「沙成?!」
そこで走り寄って抱きつきでもしたら、かわいげがあるのかもしれないが、沙成はしかし、しなかった。
 私服可のはずにも係わらず、制服のままで哲平は駆け寄ってくる。
「どうしたんだよ、沙成!」
 雪が月明かりを反射して、辺りはことのほか明るい。いつの間にか雪も止んで、沙成はゆっくり上体を校門から離した。
 かと思うと、いきなり哲平に背を向けて歩き出す。
「沙成っ?」
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