欠陥ドール
「言い訳は聞かない。お前に感情を持つことは許されない」
カナンの冷たい声があたしの中で響いて、動けなくなる。
胸に穴が空いて、そこに冷たい風が吹いたみたいに、寒い。
きっとカナンの言う事は正しい。あたしの中にあるこの感情は、否定しなければいけないもの。
…でも。
「言うこと聞けないんじゃ、お前は返品だぞ」
「いや」
即答するあたしにカナンはまた頭を抱える。
「だから…、そういうのがダメなんだよ!いいか、お前は黙って俺の言う事をきけ!」
カナンがあたしの頬をギュッと抓る。
「クソッ!痛みには鈍感なくせに…!」
さらに力を込めるカナンだけど、あたしは痛みを感じない。そういう風にできてるから。
何の反応も無いあたしに、諦めたカナンは深い溜め息を吐いてあたしの肩に両手を置いた。
「いいか、今日はリタ様の17歳の誕生日。今日はドールとして役目を果たせ」
やけに強調された言葉。
『ドール』
わかってる。それがあたしのやるべき事。その為に、ここにいる。
あたしはゆっくりと頷いた。