欠陥ドール
喉がカラカラして、水分を欲しがる。こんなにも、生理的現象は人間と同じなのに。
でも、あたしはドールなんだ。
「……カナンはいいの?」
「俺は、リタ様と話したりコミュニケーションを取る必要があるから」
「ずるい」
「またお前は…」
カナンはまた溜め息を吐いて、あたしを見下ろす。
「マリーにしか出来ない事、俺にしかできない事があるんだ」
カナンの手が優しくあたしの頬に触れる。意地悪なくせに、あったかい。
「頼むよ…。俺はお前しか信用できない」
カナンの指先の体温は心地良くて、懐かしい匂いがする。
微かに記憶に残る、お父さんの匂いに似てる。
「やっぱりカナンはずるい」
生まれた時からずっと一緒で、兄妹みたいに育った。
あの暗くて冷たい場所で、いつもあたしを守ってくれた。
あたしは結局カナンには敵わない。