欠陥ドール
何事もなくパーティーが終わって、あたしはホッと安堵の溜め息を吐いた。
張り詰めていた空気が解けて、誰もいない天井裏でひとり座り込む。
気を張っていたせいか疲れた。胸の奥に閉じ込めていたものが熱を持ち始めて、広がっていく。
…良かった。今日は血の匂いを嗅がなくてすむ。
唯一流れた血は、あたしの唇から滴るものだけ。
こんなの、なんでもない。
他人の血を全身に浴びる事程、気持ち悪い事はないのだから。
その瞬間は、無心でいるから何も感じない。でも、だんだんと意識がはっきりしてくると、お腹の中から異物が押し上げてきそうなくらい気分が悪くなる。
それは、あたしがドールとして欠陥品だからなの?
あたしが完璧なドールなら、こんな苦しい思いしなくてすんだのかな?
だったら、何故。あたしはこんな風に生まれたの、お父さん。