欠陥ドール
「……気分、悪い」
重い鈍りのようなものが胸に残っているような感覚。
気を紛らわす為に窓際の椅子に座り、部屋から半分の月を見上げた。
「今日は誰も殺ってないだろ?」
後ろから響く声に、振り向けば、いつの間に部屋に入ってきたのか、ドアの前にカナンが立っていた。
「そういうの、不法侵入っていうんだよ」
ビシ、と指を立て言えば、目を細めたカナンが渋い顔をした。
「……くだらない言葉ばかり覚えやがって。喋んな。ムカつくから」
「む」
あっさりと切り捨てられて、顔が引き攣ってしまう。
あたしは反論しようとしたけど、どうせカナンには口で敵うわけないから、開きかけた口を閉じる。
カナンはフン、と鼻で笑うと、持っていたカバンをあたしの狭いベッドへ投げた。
「で、何で気分悪いんだよ?」
「分かんない。でも胸のあたりが変。気分悪い」
「なんだよそれ…」
頭を抱えて、片手で髪をくしゃっと掴みながらカナンは呟いた。
「おい。こっち来て服、脱げ。診てやるから」
そして自分もドカッとベッドへ座って、あたしに命令する。