欠陥ドール
その後も、脈をとったりと、カナンは念入りにあたしの体を調べて最後に呟いた。
「別に異常はないな」
だから言ったのに。体はどこも悪くないもん。ドールは人間と比べて免疫力が強いのもあるけど、あたしは小さな病気だって滅多にかからない。
「全然なんともないでしょ?」
強気な態度で問えば、カナンは黙って頷いて、少し睫毛を伏せた。
「ああ、ただ…」
でも、めくれた服を下ろして、裾を直すあたしをカナンはすぐに鋭い視線で射抜く。
「ここが、乱れてる」
トン、指で触れられた胸。心臓の上。それが何を意味をするのか、カナンが何を考えているのか分からなくて、あたしの心臓はドキリとした。
あたしは何も言えなくて、俯いた。それはきっと後ろめたいから。
「今日はもう寝るんだ。いいな?」
ポン、と頭に置かれた手が優しくて、温かくて、あたしは顔を上げられなかった。
ごめん、カナン。
今日はカナンの言うことはきけないの。だってリタが待ってるから。