欠陥ドール
あたしはただ、この月の見える場所から動きたくなかった。
「えー…やだ」
それに、別にどこも悪くないし。
「早くしろ。俺は時間の浪費が嫌いだ」
なんて、カナンにとってはあたしの意見なんて関係ないんだよね。
あたしは諦めて重い腰を上げて、足を動かす。
ベッドには、眉を吊り上げたカナンがすでにカバンから聴診器を取り出していた。
あたしはカナンの隣に座って、上の服を胸までめくりあげた。
露出した肌に空気が触れて少し冷たかった。でも、それよりも冷たい金属が肌に触れる。
カナンの顔付きが、だんだんと真剣なものになって、あたしの肌の上を聴診器が滑っていく。
「ん。次、背中」
カナンの短い言葉が聞こえてきて、あたしは言われた通りに反対を向いて背中を出す。
カチャ、と聴診器を外す音がして振り向くと、カナンはそれをカバンにしまいながら溜め息を吐いた。