雪に埋もれた境界線
「昨夜、帰ると仰られた高田さんが、歩いてこの屋敷から帰るのは雪が降る中、それは大変なことですので、タクシーを呼びましたが」


「では、高田さんが帰られた頃は、まだ崖崩れが発生していなかったということですね」


 顔を引きつらせたまま、座間が磯崎に確認した。


「さようでございます」


 じゃあ磯崎が云うように、相馬を殺害した犯人は屋敷の中にいるというのか。屋敷の中にいるのは、当主である黒岩玄蔵氏、執事の磯崎、メイドの鶴岡に半田、コックの梅田と川西。そして候補者である俺、久代、木梨、座間だ。この十人の中で相馬に恨みを持つ者がいるだろうか……。いや、動機は一つしか思い浮かばない。屋敷と財産半分を手にするため……か。だとしたら俺達候補者四人の中に犯人が絞られてしまうじゃないか。そんなこと考えたくないのに。

 陸が夢中で考え込んでいると、久代が側に寄って来て腕を絡めた。


「陸、怖いよ……殺人事件なんて」


 震える声で久代は俺にそう云った。


「このような状況では、皆が不安を抱えたままですので、午後三時にサロンへ集まって下さい。もちろん使用人も全てです」


 磯崎は候補者達だけではなく、食堂にいるメイド二人にも一瞥すると、食堂を出て行った。

 食事の途中だったが、誰もが食欲を失い俯いた。しかし、メイド達は顔色を変えることなく、動揺した様子もなく、空いた皿などを片付け始めたのである。


「相馬さんを殺した犯人は、私達四人の中にいる確立の方が高そうですね」


 陸と同じように疑心暗鬼に捕らわれた座間は、低い声でそう口に出した。
 三人は座間の顔を一斉に見ると、今度は木梨が口を開いた。


「そうだね。私達はライバルなのだからね」

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