雪に埋もれた境界線
 食堂ではそれきり沈黙が続き、食事をする音と、メイド達が片付ける音しかなかった。

 食べ終わった人からバラバラに自室に戻り始め、陸もその中の一人であり、自室に戻った。

 しばらく考えごとをしていたのだが落ち着かず、久代を誘ってサロンのテレビでも見に行こうと思いついた。部屋の掛け時計を見ると午後十時を過ぎていたが、まさかもう寝ているなんてことはないよな。

 部屋を出ると、二0三号室の久代の部屋をノックした。怖がっているような、警戒しているような、久代のそんな声がしたので、陸は穏やかに自分の名を告げた。するとすぐに扉は開き、久代が安堵した顔を見せた。


「なんだ、陸か。もしかして落ち着かないとか」


「ああ。だから一緒にサロンでも行って、テレビでも見ないかなと思って」


「いいよ。お酒も少し飲みたいなぁ」


「そうだね。そうしようか」


 こうして陸と久代はサロンへ向かおうと、久代が扉にカギをかけたところで、隣の木梨の部屋が開き、木梨が出てきたのである。


「あれっ、陸君と久代ちゃん、二人揃ってどうしたの?」


「一人で部屋にいても落ち着かないから、一緒にサロンでテレビでも見に行くところです。木梨さんはどうしたんですか?」


 陸がそう訊くと、木梨は両腕を広げ、肩を竦めて答えた。


「同じだよ。こんな状況だ、部屋にいたって落ち着かないさ」


「そうですよね。じゃ、一緒にサロンへ行きましょう」
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