雪に埋もれた境界線
「ここは私の部屋です。そして全体的に電気を付けても薄暗い。しかし私達がこの部屋へ来た時どうでしたか? 扉は少し開いていて、部屋の電気は付いていなかったですよね?」


 磯崎は軽く頷き、鶴岡は神妙な顔をして頷くと口に手を当てた。


「何故、梅田さんがマスターキーを使ってまで、私の部屋に侵入したのかは分かりませんが、おそらく私の部屋の鍵を開けて入るところを見られ、私を殺すつもりで入ってきたあなたに、間違えられて殺されたのでしょう。そして何食わぬ顔で廊下に出たあなたは、私の顔を見て死ぬほど驚いたのではありませんか? 殺したはずの私が生きていたのだから……違いますか? 木梨さん」


 木梨は陸から視線を逸らし、軽い狼狽を見せたが、犯人だと認めなかった。


「それは陸君の推理だろう? 君の推理は素晴らしいと思うよ。しかしやはり物的証拠は何一つないじゃないか。私は犯人ではないと否定させて貰うよ」


「往生際が悪いですよ木梨さん。物的証拠ならお持ちじゃないですか」


 陸はそう云うと木梨のベルトを指さした。すると磯崎達全員の視線は木梨のベルトに視線が集中したのである。

 木梨は慌てて隠そうと手で押さえたが後の祭りだった。何故なら、木梨のベルトはズボンの穴に通っておらず、ただの飾りのように見え、不自然だった。


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