姫と竜 *王子が誘拐*


風呂を上がると、この上ない幸せな香りが鼻をくすぐる。甘い蜂蜜とバターの焦がした香りだ。

席に着いたエリーゼは、久しぶりのマトモな食事にゆっくりと豪快に、メイドが驚くほどに

たらふく平らげた後は

一時間ほどかけて 外の様子を窓越しに見つめならがら 冷たい空気と暖かい日差しにホッと一息をついた。


…こんなに穏やかな朝は、いつ以来だろう。


ここ数ヶ月の出来事で、すっかり疲れきった顔になっていたエリーゼは
化粧台の鏡に見た自分の姿に愕然として あわてて近くにあった化粧品で厚化粧をした。

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