ストーカークラブ
 信太はトイレに行く振りをして教室を出た。陽一にメールをすると、すぐに返信がきた。



 from 陽一
 3人がメールだけで打ち合わせをして、
 共犯って線もあるな。
 ただ、そうだとしても動機が
 分からね〜。
 とにかく信太、
 気をつけろよ! またな!
 -------END--------



 そうだよな〜、動機考えたら共犯説は難しいよな。

 考えてばかりいたので、時間があっという間に過ぎ、もう帰る時間だった。
 そして順がニコニコしながら近づいてきた。


「信太、今日飲みに行かないか?」


 疑心暗鬼に捕らわれている信太は警戒したが、それを悟られない様に平静を装って答えた。


「今夜も酔っ払って終電なくなったりしてな〜」


「大丈夫だよ! そしたら今日は信太の家に泊まるよ」


 何言ってんだこいつ。だいたい家に呼ぶ程仲良い訳でもないし、今疑ってる相手を部屋に上げるなんて冗談じゃない。


「俺の部屋汚いからダメだな。来て後悔するぜ」


 もっともらしい答えを言ったつもりだったが、順は更に食い下がる。


「部屋汚いのなんか気にしないよ。信太の事、もっと知りたいんだ」


 何なんだろうか。意地でも来ようとしているみたいだし、大学で話す様になってからだんだん束縛される事が増えてきた気がする。まるで俺の恋人の様な振る舞い……。困った。どうやって断ろう。そうだ! 予定がある事にすればいいか。


「悪い。今日は地元の友達と約束あるんだ。ゴメン」


 すると順は、ニヤニヤしながら驚く様な事を言った。


「そんなの断ればいいんだよ。それとも地元の友達に俺が言ってあげようか?」


 はっ? やっぱりこいつ変だ。


「いっいや、約束してるから。じゃ」


 信太は慌てて教室を後にした。

 背中に痛いほど視線を感じ、怖くて絶対に振り返れなかい。明後日で卒業。それまでの辛抱だ。そう自分に言い聞かせていた。




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