幸せな結末
「あの、何でしょうか?」

そう聞いた私に、
「せっかくだから、何かお礼をしていいかな?」

「お礼、ですか?」

お礼って、携帯電話を拾っただけなのに?

「そんな、めっそうもない」

私は首を横に振って断ろうとした。

「でも、何かお礼を」

そう言った男に、
「ああ、わかりました」

私は言った。

「ありがとうございます」

男がニコッと笑った。

あ、笑うとかわいいんだ。

ドキッと、心臓が鳴った。

…えっ?

「名前は?」

男に聞かれ、私はハッと我に返った。

「楠田美羽です」

「美羽ちゃんね、俺は若宮一也(ワカミヤカズヤ)」

彼が微笑んで言った。
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