幸せな結末
「えっと…」

声をかけようとした私に、
「携帯電話、拾ったんですよね?」

男が言った。

携帯電話って…あっ!

「もしかして、これですか?」

私は男の前に携帯電話を差し出した。

「ありがとう、おかげで助かったよ」

男は私の手から携帯電話を受け取った。

「私の方も、ありがとうございます」

お礼を言った私に、
「んっ、何が?」

男は首を傾げた。

「その…彼氏のフリ、ですか?」

「ああ、君が困ってると思ったから」

「本当にありがとうございます」

頭を下げた私に、
「いえいえ、こちらこそ」

男も頭を下げた。

「じゃあ、これで」

「待って」

立ち去ろうとした私を、男が呼び止めた。
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