妄想な彼女




――――………
―――……



「アタシは本当に人の未来を明るく変えれるんでしょうか?」


3年生を送る会の終了後、一緒に帰っていた俺と美緒

そんなとき美緒はおもむろに呟いた


「どう思います?棗サン…」


周りには誰もいない

「どうって…」




『美緒ちゃんは演劇が嫌になっていたアタシ達にもう一度、演劇の楽しさを教えてくれたの。』


先輩の言葉を思い出す



「素直に言うぞ?」

「はいっ!」



「俺はお前に出会ってから不運続きだ。
いきなり演劇部に入れられる、主役にされる、セリフが覚えられないと怒鳴られる…

けどな。嫌じゃないんだ。」

「…え?」



美緒にとっては予想外の言葉だったらしく、きょとんとしている




「俺はお前のおかげで夢を見つけたんだ。」

「棗サンの夢?」



「お前に命令されて、絵描くの最初は嫌だった。過去のトラウマからな…

…だけどな、お前はもう一度
俺に絵を描く楽しさを教えてくれた。」


先輩達と同じことを言った


真似したんじゃなくて、本当にそう思った



「棗サン…」

「お前はスゲー奴なんだよっ。
人の未来を明るく変えるだけじゃない…


人を感動させることも出来るんだ。」


晴紀だって演劇を見て感動したって言っていた



人を感動させるなんて簡単そうですごく難しい


「人を感動させる…」


「お前にとって演技は与えられた才能だと思う。
だから、もっと夢を真剣に考えろ。」

「夢を?」



コイツと初めて会った時、言っていた


『将来は女優になりたい』って



初めは何をバカな…と思っていたけど

美緒と接していくなかで気付いた



「お前は女優になるべきだ。」





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