妄想な彼女
「え?“じょうりく”サンじゃないんですか?」
円城さんは目を丸くしてこちらを見る
「うん…てかなんで“じょうりく”?」
「え?常識の“常”に陸上の“陸”っていう字なので、てっきり“じょうりく”と読むんだと…」
あぁ…常陸(ヒタチ)を“じょうりく”って読んだのか…
って!そんな人、初めてだしっ!
いかんいかん。自分のペースを取り戻せっ…
「好きな人の名前も知らないんだ…?」
「……………ブツブツブツ」
ん?話聞いてる?
彼女は顎に手をあてて探偵みたいな格好をしてぶつぶつ言っている
「円城さん…?」
「………」
あれ?
「おーい」
パッ
彼女は顔を上げて俺の顔をじっと見る
「ふっ…常陸を“じょうりく”って読んじゃう人、俺初めて…
くすっ…」
俺は彼女の顎をつかみクイッと持ち上げる