アリスズ
☆
 リサーが、固まった。

 ダイは、二度景子を見た。

 シャンデルの両目は、転げ落ちて行方不明になりそうだった。

 アディマは――微笑んだ。

「道理でケイコは、深い知識を持っているわけだね」

 あれ?

 柔らかい受け流しに、彼女の方が戸惑う。

 決定的な、一言だと思っていた。

 だって、31歳なのだ。

 この国の平均寿命は知らないが、決して長すぎはしないだろう。

 少なくとも、行かず後家どころの騒ぎではないはずだ。

「私より…年上…」

 リサーなんか、虚ろな言葉を呟いているほどなのに。

「ケイコの秘密というのは、それかい? あ…まさかとは思うけど…既に結婚しているとかは…ないかな?」

 微笑んでいたアディマが、後半、微かに恐れを含む声になる。

 本当に、心配げに景子を見るのだ。

 カァっと、顔に血が昇る。

 さっきまで、冷静さを演じようとしていた根っこが、引きちぎられた気がしたのだ。

「おかしい…よね」

 笑いかけて、失敗する。

 31歳未婚――それを、アディマにじっと見られている事実に、耐えられなくなってきたのだ。

「いいや…太陽に感謝しているよ」

 なのに。

 アディマは、目を細める。

「僕と出会う前に、誰かに連れ去られていてもおかしくなかった…でも、ケイコはここにいるだろう?」

 両手を、差し伸べられる。

 え?

 その手が、景子の身体を柔らかく抱き締めるのだ。

 ええ?

 太陽がさんさんと差し、ダイがいて、リサーがいて、シャンデルがいるこんなところで。

 彼女は、アディマに抱き締められているのだから。

「ケイコの国の男たちは、みな目が見えなかったんだろう…ああ、本当によかった」

 ズレ続ける論点の中、アディマは本当にうれしそうだった。

 彼のそんな行動は、三人の人間を仮死状態に陥らせたのだ。

 景子、リサー、シャンデルである。

 ダイは――ぽりぽりと頭をかいていた。
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