アリスズ
☆
「菊さん!」
二人が戻ってきた姿を見て、景子は驚いた。
大きな男の人に、おぶわれて帰ってきたからだ。
どこか怪我をしたか、それとももっと最悪なことが起きたのか。
とにかく、二人とも血まみれで。
無傷なんて、考えられなかったのだ。
彼女は駆け寄りたかったが、梅を寄りかからせているために、大きく動くことは出来なかった。
景子が一生懸命伸びをして、男の背中を見ようとするものだから、彼はわざわざ近づいてきて、膝を折って背を彼女の方へと向けてくれた。
菊は。
「すぅ…すぅ…」
穏やかに寝息を立てていた。
ね、寝てる!?
その事実に、景子は唖然とした。
戦いで疲れたとか、そういう解釈が出来ないではないのだが、こんな環境でいきなり眠れるなんて。
どれだけ胆が太いのかと、驚いてしまったのだ。
となると。
この環境で、まともに起きている日本人は、自分だけということで。
さっきまでと、まったく状況が変わっていないことに気づく。
「───」
大きな男が、背に菊をおぶったまま、子供ならざるもの──アディマに語りかける。
それに、小さな顎がこくりと頷いた。
もう一人の男を呼んで、アディマが指示を出す。
彼は、素早く景子の方へと近づいて来た。
な、なに!?
あわあわしている彼女をよそに、彼は梅の身体を景子から引き受けたのだ。
着物姿の梅を、おぶいにくそうにしつつも、彼はなんとかその背に乗せる。
ああ、そうか。
彼らは、移動を開始しようとしているのだ。
こんなところに、いつまでもいるワケには、いかないのだろう。
梅と菊をおぶわれてしまっては、景子も一緒に行くしかない。
それ以前に、行くあてなど何もないのだが。
立ち上がろうとした彼女の前に、手が差し伸べられる。
アディマだった。
「菊さん!」
二人が戻ってきた姿を見て、景子は驚いた。
大きな男の人に、おぶわれて帰ってきたからだ。
どこか怪我をしたか、それとももっと最悪なことが起きたのか。
とにかく、二人とも血まみれで。
無傷なんて、考えられなかったのだ。
彼女は駆け寄りたかったが、梅を寄りかからせているために、大きく動くことは出来なかった。
景子が一生懸命伸びをして、男の背中を見ようとするものだから、彼はわざわざ近づいてきて、膝を折って背を彼女の方へと向けてくれた。
菊は。
「すぅ…すぅ…」
穏やかに寝息を立てていた。
ね、寝てる!?
その事実に、景子は唖然とした。
戦いで疲れたとか、そういう解釈が出来ないではないのだが、こんな環境でいきなり眠れるなんて。
どれだけ胆が太いのかと、驚いてしまったのだ。
となると。
この環境で、まともに起きている日本人は、自分だけということで。
さっきまでと、まったく状況が変わっていないことに気づく。
「───」
大きな男が、背に菊をおぶったまま、子供ならざるもの──アディマに語りかける。
それに、小さな顎がこくりと頷いた。
もう一人の男を呼んで、アディマが指示を出す。
彼は、素早く景子の方へと近づいて来た。
な、なに!?
あわあわしている彼女をよそに、彼は梅の身体を景子から引き受けたのだ。
着物姿の梅を、おぶいにくそうにしつつも、彼はなんとかその背に乗せる。
ああ、そうか。
彼らは、移動を開始しようとしているのだ。
こんなところに、いつまでもいるワケには、いかないのだろう。
梅と菊をおぶわれてしまっては、景子も一緒に行くしかない。
それ以前に、行くあてなど何もないのだが。
立ち上がろうとした彼女の前に、手が差し伸べられる。
アディマだった。