アリスズ
△
「あ、ダイ」
図体の大きな彼を、菊は見逃さなかった。
彼は、ちょうどあてがわれている自分の部屋へ、入ろうとしているところで。
「ちょっと、お邪魔していいか?」
言いながらも、菊はあっさりとダイの部屋へと入りこむ。
彼は、相変わらずだなとでも言いたげに苦笑しているが、菊を拒むことはなかった。
それが、心地よい。
戦うという意味では同じ面にいるが、立場や感覚は遠い面にある。
遠い面にありながら、拒まれないというのは──こんなに心地よいものか。
「昨日…屋敷へ誘ってくれてありがとう。おかげで、トーを御曹司の前に引っ張り出せた」
この結果のきっかけは、ダイが作ってくれた。
いや。
彼だからこそ、作りえたものだ。
御曹司の部下でありながら、菊という人間を信じてくれたおかげである。
忠誠と、他勢力への信頼は相反する。
命の奪り合いが起きていても、おかしくはなかった。
それを、ぎりぎりのところで、ダイはつなぎとめる役割を果たしたのだ。
「……あまり無茶をするな」
返事は、ため息だった。
次は、こうはいかない。
次こそ、斬り合うことになるぞと、そう言いたいのだ。
「あははは…でも、もしダイと斬り合うことになったら、それはそれで光栄だと思ってるよ」
正真正銘、自分が漢と認めた男と戦える。
それは、戦う者にとっては幸福なことではないか。
ダイは、更に深いため息をついた。
そんな彼が、菊の方へと近づいてくる。
「馬鹿にする意味でもない、蔑んでいる意味でもない」
何故か、ダイが不思議な前置きをした。
何を言おうとしているのか。
菊は、計りかねて視線を上へと向ける。
「お前は女だ…」
ダイの言葉に、彼女は微かに首を傾けた。
何故、そんな当たり前のことを言うのか──と。
「あ、ダイ」
図体の大きな彼を、菊は見逃さなかった。
彼は、ちょうどあてがわれている自分の部屋へ、入ろうとしているところで。
「ちょっと、お邪魔していいか?」
言いながらも、菊はあっさりとダイの部屋へと入りこむ。
彼は、相変わらずだなとでも言いたげに苦笑しているが、菊を拒むことはなかった。
それが、心地よい。
戦うという意味では同じ面にいるが、立場や感覚は遠い面にある。
遠い面にありながら、拒まれないというのは──こんなに心地よいものか。
「昨日…屋敷へ誘ってくれてありがとう。おかげで、トーを御曹司の前に引っ張り出せた」
この結果のきっかけは、ダイが作ってくれた。
いや。
彼だからこそ、作りえたものだ。
御曹司の部下でありながら、菊という人間を信じてくれたおかげである。
忠誠と、他勢力への信頼は相反する。
命の奪り合いが起きていても、おかしくはなかった。
それを、ぎりぎりのところで、ダイはつなぎとめる役割を果たしたのだ。
「……あまり無茶をするな」
返事は、ため息だった。
次は、こうはいかない。
次こそ、斬り合うことになるぞと、そう言いたいのだ。
「あははは…でも、もしダイと斬り合うことになったら、それはそれで光栄だと思ってるよ」
正真正銘、自分が漢と認めた男と戦える。
それは、戦う者にとっては幸福なことではないか。
ダイは、更に深いため息をついた。
そんな彼が、菊の方へと近づいてくる。
「馬鹿にする意味でもない、蔑んでいる意味でもない」
何故か、ダイが不思議な前置きをした。
何を言おうとしているのか。
菊は、計りかねて視線を上へと向ける。
「お前は女だ…」
ダイの言葉に、彼女は微かに首を傾けた。
何故、そんな当たり前のことを言うのか──と。