君が必要とする限り


そこには、
大野亜矢子がいた。


ストレートな髪を風になびかせ、パステルカラーのワンピースを着ている。


よく似合っていた。


外で見る彼女の肌は透き通るほど白く、光さえも通過するのではないかと思った。



彼女がキャッチボールを得意だという事実に驚いた。


「昔……父とよくやったんです。キャッチボール。」


そのあとの表情は、
遠い記憶を探すような、
虚ろな目をしていた。


彼女の見つめる先には、
“現在”ではない“過去”があった。



キャッチボールをする2人の姿をベンチで見つめながら、


いつもよりも、
いや、初めてはしゃぐ横顔を
懸命に追った。


『これ』が、大野亜矢子であってほしいと、願った。



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