ラビットクリニック
彼はわたしから顔を離すと、また2歩今度は後退してさっきと同じ位置に戻った。


「からかわないで下さい…」

そういう声にも表情にも覇気がない。

というか、出すことが出来ない。


クスッ

彼はそんなわたしを見下して、口元に手を当てた。



「じゃあ、また後で」

彼はそう言って、診察に戻っていった。

多分、お客さんを待たせていたんだろう。


毎度毎度、わたしが1人で電話応対を任されてる時間に来て、そういうことをしていくのはやめてほしいと思いながらも、本当に彼が来なくなったらわたしはどうなってしまうのだろうかという不安感。

矛盾してしまう…。


さっきはあんなことを言ってしまいながらも、わたしは絶対昼休みになったら彼のいる個人ルームへお弁当を持って行ってしまう。


他の助手さんたちに睨まれようが、彼の元へと続く1本道をわたしは外すことなくまっすぐと向かってしまう。


胸を躍らせて、顔を少しばかり赤く染めながらわたしはあのドアをノックしてしまう…。
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