たとえばあなたが



「タカちゃん!」

どうりで聞き覚えがあるはずで、その男は、いとこの崇文だった。

「あれぇ、千晶じゃん」

そうとう飲んでいるらしく、すっかりできあがっている崇文が千鳥足で千晶のほうへ向かった。



そんな崇文を制するようなタイミングで和子が、

「聞こえてるわよ、まったくもう」

と、カウンターに瓶ビールを2本、ゴトンと置いた。

「せっかく千晶ちゃんと小山さんがいい感じだったから、タカちゃんが来てること黙ってたのに、のこのこ出てきちゃって」

和子はすっかりご立腹だ。



「お…おばさん!上司だって言ってるでしょ!」

千晶が反論するものの、和子は思わせぶりな笑みを浮かべるばかりだ。



千晶の正面では、小山が崇文を見て笑っている。

「彼は木村さんの友達?」

「いとこなんです。すいません、みっともなくて…」

「僕だって酔っ払えば同じだよ」

「まさか」

この小山があんな醜態をさらすはずない、と千晶はご機嫌な崇文を見ながら思った。



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