たとえばあなたが



「なんだなんだ?あんた、千晶と付き合ってんのか~?」

崇文がフラリと寄ってきて、小山に顔を近づけた。

小山の品定めをするようにじろじろと眺め、小山はそんな酔っ払いの視線をおもしろそうに受け止めている。



「あんたとか言わないで。小山さんです。そして付き合っていません」

「ふぅん…コヤマさん、ね。…ずいぶん彫が深いな」

「…なっ!」

(何てこと言うの!ぶっ殺す!)

崇文の失礼な発言に、千晶が拳を握り締めた瞬間、小山が、

「あははっ、よく言われますよ」

と豪快に笑った。



「木村さん、楽しいいとこですね」

小山は笑いが止まらない様子だった。

「ほんと恥ずかしいです、こんなのが身内で…」

千晶が真っ赤になって俯くと、

「恥ずかしいだとぉ~?」

と、崇文が絡んできた。

(うざっ!)

千晶は歯を食いしばり作り笑いをして、

「はいはい、お座敷でみなさんがお待ちなんでしょ。早く行きなさいよ」

と、崇文を暖簾の向こうに押しやった。




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