たとえばあなたが



千晶には、六本木の大手書店で待ち合わせと告げてある。

小山が書店に入ると、入り口近くのわかりやすい場所で千晶が雑誌の立ち読みをしていた。



花柄のクリーム色のワンピースに、濃いグレーのテーラードジャケットを羽織っている。

ニーハイブーツがイマドキ感を演出するお洒落な着こなしで、初めて見る千晶の私服姿は新鮮だった。



お待たせ、と声をかけるより先に千晶が小山に気づいて、にっこり笑った。

小山もつられて笑顔になり、挨拶がわりに軽く右手を挙げた。



「わぁ、シリウス初めて乗ります」

本屋を出て車に案内すると、千晶が明るい声をあげた。

「まだ買ったばかりだから、新車の匂いが抜けなくてね。平気?」

「平気です。新車の匂いって大好き。それより、ハイブリッドカーって本当に静かなんですね」

千晶は興味津々に、話題の新車を観察していた。

「そうだね、僕も最初は驚いた」



車内は、仕事をしているときよりもずっとリラックスした空気に包まれた。



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