たとえばあなたが



「ねえ、今夜はおばさんの店に行きましょうよ」

家族のように親しくしている和子には、きちんと小山のことを紹介したかった。

「ああ、いいね」

小山が天井を見上げたまま頷いている。

「料理もおいしいし、『秋桜』なら毎日でも通えるくらいだ」

「え?」



小山のその言葉を、千晶は聞き間違いかと思った。



「…今、何て?」

体を起こして、小山の顔を覗き込んだ。

小山は、目を丸くする千晶を見て戸惑いながら、

「え?…『あきざくら』なら毎日でも通えるって言っただけだよ」

と、自信なさげに繰り返した。



それを聞いて、千晶はしばらくじっと小山の目を見つめかと思うと、突然、

「あははは!」

と笑った。




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