たとえばあなたが



蛍光灯が切れかかっている。



ただでさえ薄暗い地下室が、ますます陰気に感じられて、千晶は嫌な気分になった。

自分で取り替えようにも、手が届かない。

お気に入りの黒光りする椅子やテーブルに乗るのも気が進まなかった。



やがていつものように階段を下りる音がして、静かに扉が開いた。

崇文が、どことなく軽快な足取りで入って来る。



「…ご機嫌ね」

冷ややかな口調で千晶が言うと、崇文は、

「まあね」

と言って、タバコに火をつけた。



何かいいことでもあったの、と聞いてやってもいいが、長くなりそうな気配を感じる。

千晶は、一旦開きかけた口を閉じて、上を指差した。



「ねえ、蛍光灯、交換して」




< 217 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop