たとえばあなたが



ふたりは結局、通りを挟んでさらに歩いたところにある、手作り惣菜が人気の和風ダイニングに入った。

ランチタイムとあって混み合ってはいるものの、店員は慣れた様子で、手際よく注文の品を運んでくれた。



たわいもない話をしながら半分ほど食べ進めたとき、萌が突然、

「…小山さん、あのお店キライなんですか?」

と、小山の機嫌を探るように、おそるおそる聞いた。



「え?」

「ここに入るまで、あからさまに無口になってたし…」

「ああ、いや…」

小山は、まだ治まらない動揺を隠すように、わざとらしくならないよう笑顔を作って、

「なんだか俺みたいなおじさんには不似合いなかわいい店だと思ってね」

と努めて明るく言った。

「ごめんよ、せっかく誘ってくれたのに」

小山がやさしく言うと、萌は笑顔で首を横に振った。




< 274 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop