たとえばあなたが



「いいんです。でも不似合いなんてことないと思うけど。たまにいますよ、得体の知れないおじさんとか」

小山の心臓が大きくドクンと鳴った。

「…へぇ」

「だってこの間もね…」

「そういえば、佐山さんとふたりだけでランチに来るのは初めてだね」

とっさに小山は話題を変えた。



あの店の話は、もうやめたほうがいい。



話の腰を折られた萌は、一瞬戸惑いの表情を見せたが、すぐに、

「…そうですね、でもうれしいな、ここのランチ高いから滅多に来れないんですよ」

と喜んだ。



「…それなら良かった」

萌に他意を感じず、小山はようやく人心地ついた思いで、湯のみに口をつけた。



「ところで小山さん、ここからが本題なんですけど」

「え?」

萌が真面目な顔をして、小山の目をまっすぐに見た。

「私、今日は小山さんにお説教しようと思ってお誘いしたんです」

「説教…?」



ニコニコ喜んだと思ったら、次の瞬間にはもう目の奥が真剣になっている。

掴めない子だ、と小山は湯のみを包み込み、冷えた両手を温めた。








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