たとえばあなたが



「なんと!明日のお相手は、研修医なの~!」

エレベーターを降りた途端、萌は突然大きな声を出して、パチパチと手を叩いた。



木曜日の昼休み。

千晶と萌は、いつも通り、オフィスの外へランチに行くところだった。

空調のないエレベーターを1階で降りると、すぐに明るいロビーに出る。



「相変わらずエレベーター暑いわ…」

夏も終わりとはいえ、まだまだ密室の空気はムッとする。

自動ドアの向こうには、初秋らしい青空が広がっていた。

ずいぶん日差しが強そうだ。

千晶が日傘を家に置いて来てしまったことを後悔していると、



「ねえ、聞いてる?」



と萌が千晶の袖を引っ張った。



「聞いてるけど、行かないよ、私」

「え~どうして~」

「どうしても」



スタスタ歩く千晶を、萌が小走りで追いかけた。




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