彼とあたし-もう1人の彼-
「ほんとにそれでいいの?」




低い声でそう言ったのは千尋だった。



どこか遠くを見つめる
千尋の横顔は寂しかった。




「仕方ないじゃん」
「…俺…今の唯伊ちゃん嫌い」
「ちょ、千尋?」





慌てて猛が止めに入った。




「そんなの唯伊ちゃんじゃねぇよ!」





久しぶりに合った千尋の目は怖かった。
怒りに満ちているようで。




「あたしになにができるの?」
「…。」
「どうしろっていうの!?」




つい声を上げてしまった。




どうせ…勝ち目もないんだから。
まさの幸せをなぜ願っちゃだめなの?




「…まさの気持ちは?」
「だから桜子…」
「まさに聞いたわけ?」
「え…」
「聞いたの?聞いてねぇんだろ?」




千尋の声は耳の中で響き回った。




< 83 / 149 >

この作品をシェア

pagetop