*エトセトラ*
いつあの野獣たちが出てきてもおかしくない。

早く、と急かす俺に、何も知らないモカは不思議そうにしている。

「うん、ちょっと待ってね。今、みんなに言ってくるから…」

「俺も行く」

「…?う、うん…どうしたの…?」

離れようとしない俺の様子に、やはりモカは不思議そうに見上げてくる。


そして、俺たちがいた個室のある場所まで一緒に戻り、モカは先に帰るからと皆に伝えたあと、俺のところに鞄を持って戻って来た。


「和泉君お待たせ」

「よし、帰るぞ」

あいつらが気付かないうちに。


そして、再び手を取って握り締めたちょうどその時、タイミングを計ったかのように向かいの部屋の扉がガラッと開いた。


「おい黒崎、どうだった!?」

「その子は!?オッケーだったってことか!?」

サッカー部の奴等が、顔を覗かせて期待を込めた目を向けて聞いてくる。その興奮した様に、モカは「な、何っ!?」ビクッとしながら俺に身を寄せた。




「悪いけど、お持ち帰りしたい子いたから。先帰るわ」

モカを抱き寄せながら答えると、一斉に「はあっ!?」と非難の声が上がった。


「黒崎!抜け駆けなんてずりーぞ!」

「知るか。お持ち帰りしていいって言ったのはお前らだろ」

「他の子たちはどうなったんだよ!」

「もう帰るってよ。残念だったな」

「マジかよ!黒崎の1人勝ちじゃねえか!」

そんな嘆きの声を上げる部員の中に混じって、「あれ?モカちゃん!?」と後藤の声が響き渡った。


……まずい。

その声に、皆の視線がモカに集中する。

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