*エトセトラ*
「………一週間?」

「うん、研修旅行なの。一週間、北海道に」

「一週間も?何で?」

「何でって言われても…」


話しを切り出した途端、どんどん和泉君が不機嫌になっていくのが分かった。穏やかだった空気が一変して不穏なものになる。

怒っているわけじゃなくて、拗ねている感じだ。

その原因は、私が通う家政学部で実施される研修旅行。それに私が参加するから。


「それ、モカも行かなきゃダメなのか?」

「まぁ…そういうカリキュラムだし。必須じゃないけど、うちの科のほとんどの子が参加するの」

「それにしても一週間は長すぎだろ。2、3日で十分じゃね?しかも何で北海道に行く必要がある」

「……私に文句言われても」


研修期間は一週間。和泉君の言う通りちょっと長いかもしれない。

ホテルや病院といった各施設をまわり現場研修をするのが目的だけど、その場所は毎年決まって北海道。

なぜかというと、観光目的も少し含まれているのだとか。

でも、それを和泉君に言ってしまうと、「行くな」と言い出しかねないのであえて黙っておく。


「……マジで行く気?」

「う、うん…、単位かかってるし…」

そう返す私に、和泉君は苦い顔をする。

研修という名目のためか、さすがに「行くな」とは言わないけど、その表情は見てあきらか。

行ってほしくないんだろう。


だけど、私としてもこればかりは行かないとは言えない。

和泉君はむむっと眉を寄せたまま盛大な溜息を吐き、ギュッと包み込むように私を抱き締めた。


「一週間も会えねえの?」

憮然としながら囁く和泉君に「一週間なんてすぐだよ」と笑い返した。



だって、この時は本当にそう思っていたから。一週間会えないだけで、またすぐ会えると。



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