*エトセトラ*
もちろん、その日のうちにその女のことなんて忘れ、顔さえも頭から忘れ去った。

俺にとっては記憶に残らない出来事。


その程度の出来事だったが―――…







「何であんたなんかが玲人の彼女なのよ!!」


久しぶりに学校へ来たある日、教室で俺に纏わり付いていたサエコが、1人の女を見つけ、突然そう喚き散らした。


教室中に響き渡るその声に、教室の空気が一瞬止まる。

俺も、ピタリと動きが止まる。



………彼女?


サエコに喚かれたその女は、青ざめた表情で頭を抱えている。


何言ってんだ……?俺の、彼女?

まためんどくせぇことになってんのか……。マジで勘弁してくれ…


新たな面倒事に巻き込まれていると思い、うんざりしながら2人のやりとりに目を向けた。

やりとり、といっても一方的にサエコが罵倒している。

その女もこの状況に付いていけないのか、サエコに圧倒され、何も言えないまま蒼白な表情でビクビクと怯えているだけ。

混乱し、今にも泣き出しそうなその様は、この俺でさえ可哀想だと思うほど見てられない。



……はぁ……だり。学校来んじゃなかった…



溜息を吐きながら、椅子から立ち上がった。


「サエコ、さっきから意味分かんねえんだけど」

助け舟、というつもりもなかったが、この面倒くさい状況を一刻も早く終わらせたい。


「玲人、あの子のこと彼女だって言ったじゃん!!」

「はあ?」

だから、彼女って何だよ。マジで意味分かんね。


チラリとその女を見ると、泣きそうな顔でそいつも俺を見てきた。

若干、俺に対して責めるような視線を向けている。


………なんだこの女。

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