*エトセトラ*
たぶん、菜都に対して遠慮しなくなったのは、この頃からかもしれない。

菜都の柔らかさを知ってしまった分、抑えられるはずもない。

隙あらば抱き締め、その肌を味わう。

その度に菜都は真っ赤な顔で困惑していたが、止められなかった。


それはきっと、菜都は俺のだという勝手な独占欲と、菜都もまんざらじゃないのではという勝手な自信。



限界が来るのは時間の問題だと思っていた。

実際、菜都がうちへ来たときは、泣きながら俺に抱き付く菜都に我慢できるはずもなく、手を出す寸前だった。

健司によって阻まれたが、あのままコトを進める気でいた。

たぶん、2度目はもう邪魔されても止められないという自信がある。


暴走する俺に対して、菜都の困惑する態度。

俺と一緒にいても、穏やかに笑うことも滅多になければ、いつも困ったように離れる。

気にかからなかったといえば、嘘になる。気にしないようにしていた。



だから、それを知ったときは、菜都のその態度にようやく納得ができた。


―――菜都の心は、俺に向いていない。


あの日、あの男と菜都が2人きりで教室に入るのを見たとき、2人の姿が重なるのを見たとき、自分がどうにかなってしまいそうだった。

菜都にも、ただ責めることしかできなかった。

そんな幼稚で浅はかな自分に嫌気がさした。



菜都が他の男を想っていると分かった時には、もう菜都の隣にいることなんてできなくて、


俺は、別れを選んだ。



それが、俺と菜都のいつわりの関係に終止符を打った時だった。


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