*エトセトラ*
――――――
―――……


「ねぇ黒崎君、ホントにいいの?」

「いいって言ってるだろ。浅野もしつこいな」


中等部にある旧図書館でのいつもの光景。

ここで浅野と親しくなって、数週間。


浅野のそばにいたくて、……というか、手に入れたくて、「勉強を教える」という名目をつけて俺は毎日ここへ通っている。

そんな俺の想いに気付いていない浅野にしてみたら、毎日教えてもらうことは気が引けるようで、「ホントにいいの?」といつもお伺いを立ててくる。


もちろん、こんなこと浅野にしかしない。

どうでもいいと思う奴に、誰が好き好んで勉強を教えるか。

そんなことができるほど、俺はお人よしじゃない。


どうして気付かねえかな…。


はぁ、と小さく息を吐きながら浅野を見ると、その顔は少し不安そうに翳った。


……面倒くさいため息だと思われたかもしれない。


「浅野に教えてたら、俺も勉強になるし。一石二鳥ってわけ。分かった?」

気を遣わせないようにそう言い聞かせると、「…そっか」と納得しながら、徐々にその顔は綻んでいった。


「ありがとう、黒崎君」

ふわっと微笑みながらお礼を言われ、心臓がドクンと脈打った。


……かわいい。


不意打ちの笑顔に、心臓がやられる。


やっぱり実感する。


マジで、どうしようもないくらい、………好きだ。


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