*エトセトラ*

覚悟の時は

和泉君と付き合い始めて数ヶ月。

部活で忙しい和泉君と一緒に過ごせる時間は少なく、中等部にある旧図書館が、2人で過ごす貴重な時間だった。

和泉君は校舎内にいるとどこでも騒がれるし、誰も来ないこの図書館が、2人のお決まりの場所だ。


お昼休憩、今日も一緒に過ごしているけど…。



「まだ勉強?」


いつものように勉強をしている私の隣で、和泉君は机に突っ伏しながらつまらなそうにしている。


「まだって言っても、さっき始めたばっかりだよ」

「ずーっと勉強ばっかりだな」

「……だって私、和泉君みたいに頭良くないもん」


前は一緒になって勉強を教えてくれていたのに、それも飽きたのか、最近は私の勉強をすぐに止めさせようとする。

口を尖らせ、ちょっと拗ねて言うと、和泉君はクスリと笑って私に手を伸ばした。


「少しは俺も構って」


そう言って私の手を取り、指を絡めながらギュッと握ってきた。


「い、和泉君っ…!?ちょっと…!!」

付き合って数ヶ月、和泉君と付き合うことに慣れ始めたつもりだけど、まだ、こうして手を繋がれるだけでも緊張してしまう。


真っ赤になっていると、和泉君はまたクスリと笑い、頬をサラリと撫でた。


そして、そのまま頬にチュッと唇が触れる。


「い、和泉くんってば…!!」

「モカ…」


私の声なんて無視。

耳元で優しく囁かれながらギュッと抱き締められ、心臓がバクバクと大騒ぎし始めた。


ま、また始まってしまった…!!

教室ではいつも無愛想で恐いのに、2人きりになると、途端に極甘モードになる。

そのギャップにいつも翻弄させられてしまうのだ。


< 91 / 210 >

この作品をシェア

pagetop