さぁ、跪いて快楽を乞え!
パソコンのキーを打つ音と書類を捲る音だけが、橘の静寂に包まれた部屋を支配する。

ふと、キーを打つその手の動きが止まる。しかしパソコンに向けた視線はそのままだ。

――誰かドアの前に居るな。

しかし、現在時刻は11時17分……この時間の来訪者となると、ごく僅かの人物に限られてくる。
それは「雅美家」の者だ。
旦那様が仕事を持ってきたか、或いは催促しに来たか。それとも奥様が旦那様が相手してくれないので私の仕事を「おしゃべり」と言う名のもので邪魔しに来たか……。

しかし、ドアの前の来訪者はなかなか入ってこない。
こうなると残りは……

「いつまでそこにいらっしゃるのです? 気配を感じて邪魔でならないのですが」

薫、ただ一人だ。
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