さぁ、跪いて快楽を乞え!
「さ、早く学校へ行きますよ」

橘がドアを開く黒いベンツを見て、薫はむぅと膨れた。ベンツで学校へ行くのは、あまりにも目立ちすぎるのだ。

「……別の方法で行く」

「歩きで、ですか?」

「……電車」

「貴方お一人で、公共交通機関に乗れるんですか?」

無茶を言いだす薫を、橘は開けたドアに手をかけたまま、身長差から必然的に見下ろす。
何しろこの薫お坊ちゃんは、生まれてから一度も、一人で公共機関に乗ったことが無いのだ。

「……」

「無理なんでしょう? 寝言は寝てから言ってください。……早く乗らないと放課後になってしまいますよ?」
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