さぁ、跪いて快楽を乞え!
日がとっぷりと暮れ、秋の夜空に星が輝き、夏が過ぎた衣替えの季節、少しだけ冷たくなった風を受けながら道を歩く。

嗚呼……寒い。

「薫って馬鹿でしょ」

「……馬鹿じゃない」

今回ばかりは少し自信が無い。いつもなら意地でも一緒に帰るのに……。

「そろそろ、切符の買い方覚えろよ」

「おう」

「あと、自分の降りる駅も覚えてくれ」

「……おう」

「ついでに賢くなってくれ」

全く反論してこない薫に、突っ込みどころを一つ、入れてみる。だが、返ってきたのは無言のみだった。

「薫が反論しないとつまらん」

「……うるせえ……」
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