【完】君の笑顔





ふっと、岡本さんの後ろに近付いてくる人物が視界に入った。


目が合って、軽く会釈する。


「こんにちは、高橋先生」


あさみちゃん。


バツが悪そうな顔をしながら、僕と、そして岡本さんを見る。


「……とにかく、帰りますよ」


早く帰らないと。


それだけ2人に告げて、半ば強引にその場に留まろうとする岡本さんの腕を掴んで歩き出す。


「嫌!!!」


必死に抵抗して、あさみちゃんの腕を掴んだ岡本さん。


よろめくあさみちゃん。


……危ない。


「せっかくここまで頑張って来たのに。 ここまで来て写真見ないで帰るなんて有り得ないから!」

大声で言い張り、掴んでいる手を振りほどこうと必死に腕を振る。

……でも、岡本さんの力はたかが知れてる。

どう頑張っても、僕が力を入れて持っている限り岡本さんは振りほどけないよ。


「……心」



その様子を瞳に移しながら、あさみちゃんが説得するように岡本さんの名前を呼んだ。


可哀想だと思う。


見せてあげたいと思う。


だけど、岡本さんが病人である限り、許可してあげる事が出来ないんだ。








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