【完】君の笑顔
不安になってくる。
「なぁ、秋」
「ん?」
横を向けば、聖はリモコンでTVを消して棚に置いていた医学書を手に取り、ペラペラめくりはじめる。
「……自分の患者と付き合ったりするのって有り?」
平然と何も考えずに言った聖の言葉に反応して、
自分の目が大きく見開いたのを感じた。
「……何言ってんの?」
「や、有りかなーと……」
どうなの?と聞かれて聖から視線を反らせて考える。
駄目と言う規則は無いよね?
「良い……んじゃない?でも、逆に仕事しずらいかも」
「何で?」
「だって自分の大切な人が危険な時に冷静な判断出来ないでしょ。
だから身内の人が入院しても、よっぽどの事が無い限り処置する事は無いし……多分担当も外れるはず」
僕も……もし家族がいきなり発作を起こしたら少しは動揺すると思う。
少しも揺るぐ事なく適切に冷静な処置をする自信は……無い。
「大変だなー医者は!これ……意味分かんない」
ポンッと投げて絨毯の上へと置かれた医学書。
……元の棚に戻してよ、と心の中で思った。