【完】君の笑顔





不安になってくる。



「なぁ、秋」


「ん?」



横を向けば、聖はリモコンでTVを消して棚に置いていた医学書を手に取り、ペラペラめくりはじめる。




「……自分の患者と付き合ったりするのって有り?」



平然と何も考えずに言った聖の言葉に反応して、

自分の目が大きく見開いたのを感じた。




「……何言ってんの?」


「や、有りかなーと……」




どうなの?と聞かれて聖から視線を反らせて考える。



駄目と言う規則は無いよね?



「良い……んじゃない?でも、逆に仕事しずらいかも」


「何で?」


「だって自分の大切な人が危険な時に冷静な判断出来ないでしょ。

だから身内の人が入院しても、よっぽどの事が無い限り処置する事は無いし……多分担当も外れるはず」




僕も……もし家族がいきなり発作を起こしたら少しは動揺すると思う。



少しも揺るぐ事なく適切に冷静な処置をする自信は……無い。




「大変だなー医者は!これ……意味分かんない」



ポンッと投げて絨毯の上へと置かれた医学書。



……元の棚に戻してよ、と心の中で思った。







< 38 / 268 >

この作品をシェア

pagetop